審査員講評

特定非営利活動法人日本ターンアラウンド・マネジメント協会

理事長 許斐 義信 様

許斐でございます。まず、私は立場上、教員でもあったこともありますので、若干、ケースに関して解説をさせて頂きたいと思います。ケースコンペティションとは何だろうかということなんですが、特にケーススタディについてはご承知おきと思うのですが、その目標は、知識を勉強するわけではなく、叡智を磨くことにとなっているんですね、Wisdomを磨くと。しかし教員では、その磨き方は教えられないから、特にビジネススクールができた当初は、皆さんが自分で学ぶしかない、それがケースであり、事例ではないと。如何に経営問題を定義し、どう答えをだせるかという問題に挑戦してみよう、ということだと思っております。特に、マネジメントの問題は、学校の講座では、私もその一人であったかもしれませんが、教員は専門領域があり、その意味で組織的に縦割りなんですね。蛸壺の中に教師はいると、概してですね。そうじゃない方もいらっしゃるんですけども。したがって、総合化をして経営問題を定義することは非常に難しいことだと思います。どうして難しいかというと、経営問題においては、例えば今回のケースでも営業問題がうまくいくだけで、仮に組織に問題があっても、それで経営的には十分かもしれないし、また組織がうまくいけば会社が変わって、事業的にうまくいくかもしれない。そういう専門性の力ってあるんですよね。もう一つは、企業全体を俯瞰する力があるんだけども、その場合、概して全体的視点では抽象的、総論的であって、なかなか全体を見て核心的問題に深く切り込みには、難儀なことが多いと思います。今回のこの議論じゃないけども、ビジネスモデルを含めて基本的事業の特徴を見出して、手をうたなければ答えを出せないって、その類の問題ですので、普段の授業や実務の経験もそうかもしれませんが、なかなか難しい。多様な回答もあるし、したがって、財務から経営が見えるとか、組織から経営が見えるとか、マーケティング、顧客から全体が見えるということもあるわけなので、企業活動は非常におもしろい、正解がある訳でもなく、柔軟で多様な可能性がある分野が経営だと私は思っております。こんなこといっている私自身、この種の経営問題を未だに超えられていませんので、評論だけだと思って、この私論は切り捨てて下さい。もしもご関心があったら挑戦頂けたらうれしいというのが、私の個人的提案です。

さて、そういう意味では、今回も非常に数多くのチームがご参加いただきましたこと敬意を表します。ただ残念だったのは、学校がもっと全国区になればいいなと思っております。出張費用などそういった問題もありますが、それぞれでより活性化する為の必要条件を御提案頂いて、なるべく多くの学校がご参加いただきたいと希望します。学校の特徴ってあると思うんですよね。ビジネススクールの特徴、例えば、ファイナンスに強いとか、例えばマーケティングに強いとか、慶応義塾大学ビジネススクールだけは、私も若干知っておりますので、申し上げれば、総合性に強いけど、個別課題には概して限界があると、思っております。しかし経営スキルは本来個々人に依存しているとすれば、自分がどこかの課題を学ばなければいけない、というその点を、他の学校からこのコンペに応募された方々の発表を聞いて、自らの経営スキルのポジションを再定義するというのが、おすすめでございます。それで不十分な場合、不得手な問題、つまり自分で処理できない領域が重要だと思えば、パートナーシップを組めばいいわけで、全て勉強しなければいけないということではなくて、いかに自分のできないところや、わからないところを認知するかというのが重要で、それを超えようと、敢えて勉強する必要はなく、協調してうまくコトに当たればいいわけですから、そういう経営もありかな、と思っております。

毎回コメントを述べさせて頂く際、私は、最初に御指名頂くという立場から、個別の話はしないでおこうとして考えておりますが、私だったらこうするなという点を簡単に申し上げたいと思います。

第1のテーマは、本ケースの設問に関わる姿勢の問題です。私だったら、社長になり替わって経営提案をしてくれという、要請を受けたときに、経営構造面での条件を考察しないで、即座に、その要請に乗るかどうかを、検討します。どこかのチームがこういう条件でないと社長の立場で提案することは、遠慮する、という検討があってもいいかなって思ったんですけど、その種の記述は残念ながらありませんでした。会長や創業者や株主に対してどうやって説得するかというより、先ず説得するよりも提案する自分の立場を斟酌し、先ず、それに関する要求を出すとか、条件飲まないとやらないよっていう話、つまり事前交渉の機会があってもよかったなと、そういう提案を出せなかったかなという、第1の問いかけであります。

2番目はですね。これは、より重要なテーマだと思います。今回は、多くのチームがそうだったんですけども、会社の経営状態が悪くなった原因と解決策というのが、これがどう関わるかというのは問題です。現状の問題だけを過去に囚われずに、全く切り出して関係なく新たに手を打つ方法もあるし、関係付ける方法もあります。ところが、昔の問題が今も根付いていて、ずっと組織に根を張っているとすれば、次にそのリスクが顕在化する可能性もあるわけで、どうしたらいいかという、その辺は非常に重要な検討課題だろうと思います。企業の状態が悪くなるには、悪くなる原因が何かあるわけです。一番易しい解答は、マクロ環境が悪くてこうなったと、マクロのせいにしちゃうのでもいいし、自責にばかりしてしまうと心理的に汲々となってしまうから、これは生きられないということもあるわけなので、どういう風に経営危機に陥った原因と解決策とを関係付けるかというのは、もう少しディスカッションをすべきだと思います。この後のパーティででも情報交換をしたいなと思っております。

さらに2つだけ少々具体的な感想を申し上げます。一つは、ここまで成長してきた会社の起爆力に関するテーマです。このケースの企業が初期の段階で商売を開始したときは、顧客とのリレーションを重視してきた会社だと思います。それが、なぜこういう事態に立ち至ったのでしょうか。そこには何らかの転換点があったでしょうし、そこで何が起きたか、という課題です。想像するに、経営の効率化とか、収益性とか、そういう経営努力をすることに転換した、と推定されます。しかし今日でも多くの企業で経営課題として取り上げられているこの種の経営目標を設定するには、欠かせない経営リスクがある、と仮説しております。つまり常識的だと思われるこの種の経営課題設定には、意外に既存の事業上の必要要件を毀損している可能性もある、というふうに思います。このケースの会社も、その問題を超えられず、こういう事態になってしまったんじゃないか。そう邪推します。私は、これを見えない経営の転換点だと定義しております。

後は、もう一つだけ申し上げて終わりますが、これは経営権と株主権がどう関わるかという、テーマです。要するに、株主の権限問題、自らの経営権と経営責任そして株主権との関わりがどうあるべきか、という課題です。触られているチームもありましたが、分析に少々難がありました。株主でもある財団ですが、一般財団か公益財団かわからないけど、議決権も制限されたり、事実色々と難しい問題になっているし、金融機関の株主も持株比率が10%になっています。そのように10%持てるのは、一応常識的に言えば、生保ですか、5%なら銀行ということになっているのだけど、では10%持っているということはどういう意味なのか、もう少し踏み込みがあってもよかったと思います。たぶん優先株の可能性もあると思ったりもしまして、そういう意味では経営権と株主権の関係は、利益相反の関係でもあるし、協調関係でもあるわけなので、どういうふうに考えていったらいいのか。この種の債権を保有している金融機関の制度的問題はマクロ的な日本経済の大問題だとも思います。特に、間接金融、直接金融との連結性に関して、システミック・リスクがあると思っています。どうやってこの混線したマクロ環境下で、経営的に手を打っていくのかというのが重要な問題で、たぶん今後経営に携わる機会がある皆様方が、社会全体のいろいろなシステミック・リスクを吸収して、経営的に答えを出さなければいけない、という大命題を抱えています。当面はこの種の呪縛からは逃げられないと思います。私もこの課題には挑戦中ですが、未だ具体的な答えをだせていないかもしれません。経営に関心を持っておられる皆さんを、このリスクの認識と解消への挑戦にお誘いして、私のコメントとさせてください。紙幅の制限から説明不足であると思いますが、ご容赦ください。

最後になりますが、皆さんの今後の経営への挑戦を期待しております。あまり背伸びしないで、気長に挑戦してくださいと、提案させて頂き、私のコメントにさせて頂きます。

 


株式会社ドリームインキュベータ

執行役員 三宅 孝之 様

発表者の皆様大変お疲れ様でした。

今回初めて審査員をさせていただいて、ドキドキ・ワクワクしていましたが、期待以上の素晴らしいものが出てきたと感じました。実際の作業時間等は短期間と聞いていましたし、チームで練り上げていくのは大変難しいはずであることを考えると、このレベルまで作り上げていらっしゃったのは本当に素晴らしいと思います。以前から参加されている他の審査員に聞いたところ、年々良くなっているとも聞いていて、なるほどとも思いました。

一方で、セミファイナルの結果についてセミファイナル審査員からブリーフィングを受けているときには、再生戦略ではほとんど差がないだろうな、むしろ成長戦略ですごく差がでるのだろうなと期待をしておりました。しかし実際ふたを開けてみると、思いっきり成長戦略を作って提案したチームはむしろ点が下がり、逆に、成長戦略としては割と弱くて現実に即したものを提案したチームが相対的に高得点という皮肉な結果になってしまったなという印象です。成長戦略にフォーカスしているドリームインキュベータとしては、よい成長戦略を提案したチームにもっと高い点をつけたいと思うわけですが、今回はそうはならなかったというのが大変残念でした。まずは再生戦略がないと、成長戦略もままならないのである程度は仕方がないとは思うものの、今後は成長にも力を入れた提案が出てくればいいなと思っています。

敢えて成長で光るものがあったかなというものを挙げると、Eチームのパターンオーダーの考え方は、「バリュー」に着目していて面白いなと思いました。もう一つは、Bチームのストックレスショップにもキラッと光る要素があるなと感じました。もしかしたらこれ以外にも、成長戦略について実は深く考えていて、審査委員側がもっと突っ込んだ質問をすれば出てきたのかもしれませんが、再生戦略のプレゼンだけでもすごく大部にわたっているし、質問時間も限られているので、そのあたりがもっと改善できると良いかもしれません。

トータルで申し上げると今回とても面白かったので、来年も是非参加したいと思いますし、その場合には、もっともっと成長のところに光を当てていけたらいいなと思っております。

ありがとうございました。

 


フロンティア・マネジメント株式会社

代表取締役 大西 正一郎 様

皆さん、大変お疲れ様でした。先ほど三宅さんからもお話があったように、非常に素晴らしい内容だったと思います。私は昨年初めて参加して、今年2回目です。特に、リストラについてのキャッシュとか色々なポイント、それからイノベーションも皆さんそれぞれで個性を持って入れているという点、非常にまとまっていたという意味でも、年々レベルが上がっているという印象を持ちました。その中で、2~3点コメント申し上げます。

一つは、リストラのところですが、皆さん、上海工場の売却というのは、比較的すごいプラス面で早期改善効果が出るものと捉えがちで、私どもの会社も中国の撤退サポートをやってはいるんですが、実際はキャッシュをつけて売らなければならないケースや売れないケースというのも結構多いものですから、実は簡単ではないんです。例えば、リストラや撤退で閉めて雇用を止めるというときに、キャッシュが先に出るのに対し、実際に売れて保証金が返ってきたり、売却益が出るのには、結構時間があく、もしくは売れるかどうかにボラティリティがあるのが現実なので、そのあたりをもう少し掘り下げて考えると、資金面から見て工場の撤退とはそんなに簡単ではない。むしろ撤退損が多いがために、撤退しないという判断もあるということが現実だということを、ぜひご理解いただければと思います。

2点目は、皆さん、イノベーションという意味で、新しい施策も盛り込まれていました。ただ少し思ったのは、さきほど許斐先生からもあったように、再生の場合、結構大事なのは原因ですよね。この会社は何故業績下がってきたのか。それをどう解消していくのか。今回は、原因究明という意味では、市場がシュリンクしていうのもあるんですが、その中でもブランド自体が陳腐化していて、市場のシュリンク以上に売り上げが下がっている、ということだと思います。そうすると、通常は、既存のビジネスの中でも新ブランドを立ち上げるとか、そういう施策をやっていかないと、今までのブランドだけでトップラインを維持しながら利益を出すというのは、これはなかなか難しくて、ここの部分の既存ビジネスの施策をもう少し掘り下げた方が良かったのかなと思います。今回、想定された会社の課題ということですが、通常、こういう1960年代設立の老舗アパレルだと、だいたい顧客層は、40代、50代、60代なんですね。それが、今回は、20代、30代ということは、恐らくケース設定からすると結構ブランドの入れ替えが成功してきた会社かもしれないと思う。そのへんのブランドの損益からみた撤退のところは皆さんうまく述べられていたと思うのですが、もうひとつ新しいブランド、場合によっては、今の世代ですと、女性の50代、60代のシニア層がターゲットになるのかどうかの議論もあまりなかったと思うので、こういったことも踏まえてやっていただけるとよかったと思います。

最後に、こういう再生のケースですと、経営責任とか、リストラをすると、経営者が無傷ということはあまりなくて、それが本当に給与カットだけでいいのかという議論があるのですが、痛みを伴うものをやるからには、それなりの覚悟は必要です。その真剣度合いというのが、多少チームによってトーンがあったと思いますが、実際はそんなに簡単なことではないということを、ぜひご理解いただければと思います。

総じて皆さん素晴らしかったと思いますが、現実になるともう少し掘り下げて、特に既存ブランドをどう維持していくか、上げていくか、ここが実際にはかなりの精力を注いでやるところだというところを最後にコメントさせていただきます。どうもお疲れ様でした。

 

 


コーポレート・ドクター株式会社

代表取締役 大川 康治 様

大川でございます。

私は去年から審査に加わりまして、今年で2回目でございますが、全体感から申しますと、プレゼンテーション能力は非常に上手になっており、短期間にこれだけのプレゼンをするための準備は、本当に大変だったろうと敬意を表しております。

問題把握もかなり的確に出来ております。資金繰りを中心とする短期経営戦略については、概ね理解されておられると思いました。長期戦略については、それなりに持っておられますが、短期戦略と長期戦略の間をどう継いでいくか、より具体的な中長期戦略について、もう一歩詰めがあってもいいかなという感じがいたします。

それから、日々再生案件を扱っている者から見ますと、再生案は一般的に実行が難しいものが多い様に思われます。例えば非常にいい計画を作って持って行っても、オーナーの方経営者の方またはステークホルダーの方等々は、個別の利害がありその中で計画を承認してもらい実行できる案件はそれほど多くはありません。中長期事業計画作成に向けて、より実現可能な案を提案していただければと思います。

提案の中にはいわゆるイノベーション的な、例えば3Dによるバーチャル試着というアイデアも出てきています。又エコノミックコマースが解決策の一つとして提案されているところがありましたが、E通販は国内だけじゃなく海外にもマーケットを伸ばしていくわけなので、海外と日本の間で文化の違いですとか、ファッションに対する認識の違い等もありますので、すぐに効果は上がらないかもしれませんが、これから文化の違いを埋めていく工夫も必要になると思います。

説明巡業というようないろいろ拠点周りを肌め細やかくして従業員の理解を得たいというのがありましたが、経営方針を末端まで浸透させる上では非常に効果のあることだと思います。みなさん非常によく研究されているなと思いました。来年も、できれば出席させていただきたいと思うと同時に、みなさんの一層のご活躍をお祈り申し上げます。本日はどうもご苦労様でした。

 

 


ダイヤモンド社 ハーバード・ビジネス・レビュー

副編集長 大坪 亮 様

大坪です。今回私は初めてのここに座っているわけですが、ファイナル5チームはいずれも課題分析や打ち手の有効性、実現可能性の点でよかったと思います。その中で、優勝チームと準優勝チームは総合的に順当な結果かなと私は思うのですが、ハーバード・ビジネス・レビュー賞としては、成長戦略がユニークで実現度が高いグロービスチームに決めました。一番印象的なものは、三宅さんも言われていましたが、パターンオーダーの導入という戦略です。きいていてすぐにでも具体的にアパレルメーカーが導入してもおかしくないと思いますし、消費者ニーズにもあっている、さらにはそれを利用したプラットフォーム戦略は現実的な成長戦略だと思いました。ただ、審査員の質問にもありましたが組織構造では課題が残った。

神戸大チームについても、アッパーミドルをECで売っていくのは突破戦略としてありだと思う。ただ供給体制は具体的に語っていただいたが、質問にもでていましたが、これをM&Aで補完する難しさもある一方、需要をどういうふうにECで高めていくのか、もう少し具体策があったらよかったと思います。

でもいずれにしても、非常に現実的にありうる戦略で、私も勉強になりました。どうも今日はお疲れ様でした。以上です。

 


ペリノ・リカール・ジャパン株式会社

マーケティングマネージャー クリスティアン エルンスト 様

ありがとうございます。私は、今年は2回目となりますが、毎年、タフなビジネスケースが多いと思います。非常にこういうテーマになっていると思うんですけども、ビジネスケースは、非常に困っている会社になりますね。そういうときは、当然、数字の分析、キャッシュフローとコストカットがメインになるのは当然かなと思いますが、ただそれで、リストラとコストコントロールで、ファイナンスや経理で解決出来るかどうかは、ちょっとはてなですね。

私が思うのは、今回のシーバスリーガルイノベーション賞があるんですけども、キャッシュフロー賞ではないので、イノベーションに注目しました。イノベーションは、特に困っている時は必要になります。Game changerが必要です。今回、イノベーション賞となったチームは、マタニティドレスを考えたんですが、それは、Game changerと言えるかどうかはわかりませんが、ただNice idea、Out of the box ideaですね。

困っているときは、当然コストコントロール分析は必要なんですが、Out of the box ideaのように、考えたことがない意外なアイデアが非常に大事になると思います。よくOut of the box ideaのように、少しだけ離れてみて何をすればいいかを考えること、このケースの場合はアパレルですが、根本的に考えると、Out of the boxから一番いいイノベーションとビジネスが生まれてきます。例えば、マタニティドレスがマタニティに対して非常に成功するのであれば、一つのSKUだけで成功、大きいビジネスができるとは思えないですが、もし、マタニティドレスのBrand awarenessが上がったら、そこからマタニティビジネスに入ってもいいと思います。マタニティグッズを妊婦のため、子どものために開発すれば、完全にBrand stretchができるかと思います。

一番Brand stretchのいい事例は、富士フイルムです。富士フイルムは、デジタルカメラが生まれてきて、フィルムが必要でなくなったんですね。ただ、技術があります。Laboratoryがあります。それで化粧品を作った。素晴らしいBrand stretchだと思います。だから、困っている時は、本当に少し離れて根本的に考えて、いいアイデア、いいイノベーションができて、それでビジネスターンアラウンドができると思っています。

あとは、マタニティドレスに戻ると、人の問題を考えて、ソリューションとなっていた。ニーズを考えると、いいソリューションになります。それもお金、利益とかだけではなく、消費者の問題を解決するという考え方で素晴らしかったと思います。それも社会貢献的な部分も入ってます。お母さんの健康、Well being、赤ちゃんの健康、Well being、をアイデアで、イノベーションを生まれており、本当に感動しました。本当にありがとうございました。

 


経済産業省

産業再生課長 井上 博雄 様

はい、みなさんこんにちは。僕も今年初めてやらしていただきましたが、各チームの出来栄えの素晴らしさに改めて驚いております。みなさん随分勉強もされているし、実際本当に実現可能性のあるようなプランをこの短期間で作られているところは素晴らしいなと思います。

特に、実は最後にあんまり賞がもらえなくてちょっとかわいそうだなと思ったんですけど、Cブロックの神戸大学のサカイダイスケさんのチームは、大変素晴らしいプランだったと思います。再生と成長と両方のバランスが必要だと思いますが、その前提としての再生のところはしっかりやれていたし、成長のところもKUSUGUですかね、一方的、一方通行ではなくて双方向のライフスタイルを提案していくといったような形、なかなか難しいのは事実だと思うんですが、こうした新たなデータのプラットホームを当初は難しくても中長期ではグローバルに改めて構築していければ、もしかしたら勝てるかもしれないといったようなところに一生懸命オムニチャネル化を含めた業界の構造変化をしっかり見て考えられたというところは特筆に値するんじゃないかと思います。

全体を通じてですけれども、やはりこのケースの背景にあるのは、ひとつはものすごいスピードで世界の技術革新が進んでいるということだと思います。加えて、その結果として経営のスピードが求められているし、実はグローバル展開もとても大事になっていると思います。これ、それぞれの要素について、実はなかなか踏み込み切れていないというところも多いのかなという風に思いました。それぞれもちろんケースを前提にやっていく上では、ファクト・データに基づいて議論していかなきゃいけないというところはあると思うんですが、中長期の戦略を描いていく上で、このケースを離れて、みなさんこれから現場に入って行かれる時には是非技術革新・経営のスピード、あるいはグローバル展開の創生というところを強く意識してやっていく必要があるだろうと思いますし、僕らも政策形成の中ではこの3点すごく大切だなと思ってやっていますので、是非これからもがんばっていただければありがたいと思います。ありがとうございました。

 

 


株式会社経営共創基盤

取締役 マネージングディレクター 木村 尚敬 様

 

木村です。私は、ケース作成や予選の段階から携わっている人間としまして、ファイナルに残った5チーム、ここにいらっしゃる20チームだけではなくて、当初から参加して頂いた143チームの皆さんに向けたメッセージを差し上げたいと思います。ファイナルに残りました5チームの皆さん、大変お疲れ様でした。それから、セミファイナルの20チームの皆さんも大変お疲れ様でした。

ケースに関して言うと、今年は第7回になるんですけども、最初の4回は、割と再生系のテーマで、5回目から成長系へテーマを振っているんですね。再生系のテーマというのは、正しい答えをどう正しく出すかということが求められるんですけども、成長系のテーマになりますと、先ほどからもイノベーションという言葉もあります通り、いかにバラエティのある打ち手の中から、いい打ち手を出していくかということが求められてくると思います。

ただ、このコンテストの根底にありますのは、リアリティなんです。そのため、ちょっとずつトラップがあるんですね。今回みたいに、キャッシュがショートしてしまう可能性があるとかですね。どこにトラップがあるか、毎回お楽しみなんですけど、そのトラップがあります。そのリアリティがいかにあるかないか、リアリティというのは、組織、ステークホルダーを動かして実現可能性がどれだけ高いのかということもありますけども、他にも色々あります。短期的にみた場合のリアリティは、財務的な数字のリアリティなんですね。これはもう少し具体的に言いますと、皆さんが立てられている打ち手と財務三表との関係性です。特に、多くのチームの皆さんがPLの議論は結構されているんですけども、例えば、大西さんからもお話がありましたが、上海工場を閉めたときに撤退費用という言葉を使いますけども、撤退の場合は、撤退キャッシュなんですね。そもそもこの事業が、この会社が、PLが原因でリストラが必要なのか、例えば、低収益の事業があるとか、もしくはBSに起因している要素が多いのか、例えば、在庫が多いとか、海外拠点が困っているとか、今回のケースのようにキャッシュが問題なのか、これの軽重はありますけども、それによって打ち手も変わってきますし、今回のように、キャッシュの場合、撤退の場合は、撤退費用より、撤退キャッシュ、一次キャッシュの方が出てきますので、それをどう手当するかの議論の方が重要で、PLは割と遅効的に、後になって効いてきますので、そこの時間軸といいますか、お金の出と入りのタイミング、それをいかに具体的に出来るかというところかと思います。やはり、お金の出と入りのタイミングは、ここはなるべく解像度を高くして、今回のケースの場合は出来ませんけども、リアルな実務においては、月繰りだとか、日繰りにまで落としてやるケースもありますので、そこのリアリティをどれだけ担保できるかという話が必要だと思います。

将来の話に関して言うと、戦略のリアリティだと思います。まず一つは、組織がどう動いていくか、本当にそれが組織としてケイパビリティを持っているのかというリアリティですね。もう一つ、視点として重要なのが、競合だとかユーザーにとって、それがどれだけリアリティがあるのかという話です。例えば、M&Aの話をCチーム、神戸大学のチームがおっしゃっていましたけども、本当に相手は売ってくれるの?という話ですとか、それからDチーム、慶応のチームがマタニティドレスの前に、ブランドを統合して、お店を共通化するというプレゼンテーションをされていましたけども、あれってサプライヤーサイドから見たら、コストの共通化ができるのでメリットがあるんですけども、ユーザーサイドから見たら、それがどう映るのか、それが本当にユーザーベネフィットがあるのかないのか、こういうリアリティチェックをしていかないと、実際の戦略というのは実現できないと思いますので、そのあたりを念頭においていただければいいのかなと思います。

来年はどういうケースになるかわかりませんけども、さきほども審査員の方々から、色々なヒントを頂きました。ということで、頭の中に来年のケースをどんな感じにしようかなっていうのはありますけども、それは来年までのお楽しみということですね。皆さん、普段ビジネススクールで何百本ってケースやられていると思いますけども、このケースに関して言うと何百分の一ではなくて、皆さんにとっても非常に思い入れがあって、貴重な時間を使って、且つチームビルディングをして、非常にいい腕試しの場にもなりますし、貴重な経験にもなると思いますので、来年もぜひ奮ってご参加頂ければと思います。本当にどうもありがとうございました。

 

 


株式会社経営共創基盤

代表取締役 CEO 冨山 和彦 様

富山です。

私は、許斐先生と二人で、一番最初からずっと担当しており、一番古い審査員になってしまいましたが、七年間の経緯でいうと、おかげさまで基本的にずっとレベルが上がっています。大変結構なことだと思います。さすがにこのセミファイナル、ファイナルに来るチームは致命的な欠点がだいぶなくなってきています。プレゼンテーションのスキルも明らかに上手になっているので、それはみなさん自信を持っていいと思います。

その一方で、ケースのテーマがやや再生モードから成長に振れてきているので、実はそのほうが難度が上がります。というのは、再生には正解があります。潰れたらアウトなので、潰さないためにどうすればいいかというのがマストなので正解に近いものがあるわけです。ある意味で、再生は20年後にはAIがやってしまうかもしれません。正解があるということは、AIに置き換えられるということになります。逆に言うと、成長の議論は、クリエイティビティがまさに問われるので、ある意味では、難度が上がるし、審査が難しくなっています。それはいいことだと思っているので、来年以降も、たぶんこのトレンドは変わらないでしょう。

 

今回のケースのアパレル領域は、縮小しているという衰退産業的なトーンのところもありましたが、実はそんなことはなく、付加価値率があれだけ大きい産業なので、かつ本質的に官能材ですから、伸びしろはいくらでもある産業だという認識で、各チームは提案を出しているのだと思います。ですから、成長のところが実は面白くて、価値創造の方向性、打ち手と、色々なことができますが、それをやっていく過程においてお金のまわりとかはどうなるのか、という部分が恐らく今回の一番チャレンジングなところです。

なぜチャレンジングか、その、成長が面白いかというと、今アパレルを巡る領域というのは、ものすごく変わっている最中で、いわゆるマス・カスタマイゼーション革命が起きようとしています。要は、AIとかIoTとかビッグデータ革命がモロに効いてくるところです。もともとアパレルは無駄の多い産業です。一番クラシックなモデルは、いまだに実はアパレルの商売の6,7割はこのモデルでやっていますが、基本的には季節ごとにデザインして、大量に作って、百貨店に押し込んで、プロパー消費といいますが、定価消費をして、売れないとセールで消化し、最後はいわゆるファミリー販売という閉じた世界でさばき、それでも半分くらい残るのでそれをつぶすわけです。そういう無駄の多い産業構造なわけですが、今、IoT革命でこれがガラッと変わる、実は革命の最中です。

今回、個人的な希望としては、そこをもう少し深堀りしてもらえれば、ダントツ優勝のチームがあってもよかったかなと思いました。

もし皆さんの中で、起業しようと思っている人がいたとしたら、これからアパレルは面白いです。既存のプレイヤーよりも皆さんのような、ゼロベースで何にも変なしがらみのない人が、この領域に飛び込んでいろいろやってみたら、結構この世界面白いと思います。

昔、カネボウの合成繊維部門は、「セーレン」という自動車部品メーカーに売却されました。セーレンは、今、この世界の革命児になっています。要するに、もともと染屋さんから始まった古い会社が、カネボウの合成繊維部門の古い事業部を買収して、これ完全にサプライチェーン・マネジメントそのものを付加価値にして、マス・カスタマイゼーション・サービスをやって、ものすごく伸びています。これは我々が昔カネボウの再建をやっていて、その合成繊維部門をセーレンに売却した時には思いもよらなかった革命的展開です。こうしたことが世界中で起きるので、結構面白いと思っています。そういう革命家が日本から出てきてきたら素晴らしいし、ひょっとしたら、こういうモデルは、日本のほうが強い可能性があります。緻密にサプライチェーンを組み上げ、効率的に材料を使ってカスタマイゼーションしていくのは、ひょっとしたら日本型のすり合わせモデルがヨーロッパモデルに勝てる可能性があるので、是非誰かチャレンジしてもらえたらと思います。

 

●チーム別講評

5チーム目のEブロックのチーム。

グロービスのチームです。キャッシュフローと貢献利益と営業利益のところが引っかかります。撤退の議論は、今後どうしてもビジネスをやるとき出てくると思います。撤退基準というのは、一つは貢献利益。最悪のところです。やればやるほどお金が減る世界なので、貢献利益マイナスのモノは直ちにやめなければいけないという状況に陥っているビジネスです。もちろん、営業利益をハードルにするという考え方もあります。これは、キャッシュフローより時間軸を長くとった時のP/Lベースで見たときに、営業利益がマイナスということは、実は共通固定費を回収できないビジネスになっているということです。短期的に即撤退に迫られていなくても、ずっと営業利益赤の状態で引っ張るということは、長期的には固定費投資が回収できないので、これも一つの基準にはなりえます。もし上場企業であれば、ROIC、ROEです。そこに投入しているキャピタルに対して十分な利益を上げているかどうか。赤字黒字ではなくて、ROICとして、例えばROE8%程度が一般的なハードルと上場企業の場合言われていますが、借金がなければ、すなわちROICとして8%ということになります。そうすると、ノンレバレッジで借金を使わず自分の手金で投資をした場合に、8%を下回ると実質赤字ということになります。株主の目線から見たら株主がその会社に投資しているお金をどんどん減らしているということになるわけです。Required rate of returnをクリアしていないということは、株主からするとその会社に投資するより他の会社に投資した方がいいということになる、あるいは、ETF買っといたほうがいいということになる。実質的には資本コストという意味で赤字になってしまうということを意味します。ですから、ROICというのも一つの撤退基準になってきます。

時間軸でいうと、ROICが一番長い時間軸です。営業利益が中間的な時間軸です。貢献利益が極めて短期的な時間軸になるので、この三つはそれぞれの意味合いが違いますから意識するように考えていってください。事業ポートフォリオとか機能ポートフォリオとかをリシャッフリングして入れ替えていくということは、これからの事業経営上必須です。入れ替えるということは、新しいものを始めるという基準と止めるという基準という両方を持っておかないと新陳代謝が進まないので、これは体の中に叩き込んでおいてもらえるといいのかなと思います。

ちなみに、今百貨店も富士フィルムなんかがびっくりな業態変換を仕掛けてきていてすごいのですが、5チーム目のパターン・オーダーのところはすごく面白い視点で、ああいう話とAIとかをうまく絡めていくのは一つの革命の切り口です。そこで、毎回つけているチーム名は、「百貨店よりアイ(「AI」ローマ字読み)でしょ」というようにお願いします。

4チーム目。

私もイノベーション軸としては面白いと思いました。ただ正解のある部分がちょっと甘いところがありましたので、その辺が点数がちょっと伸び悩んだ原因かなと思います。

このイノベーションが飛んでいくということは、相当飛び地の経営資源を取り込んでいかなければならないというのがあるので、ここをどうしていくのかは現実問題としてはやはりチャレンジングです。人も全然違う人材を取り込まなければいけないので、あの辺がもうちょっと掘り下がっていると、もっと点数が伸びたかなという感じがしています。

人口減少という問題は、モロに日本の問題なので、「アパレルで日本再生」というチーム名にしておきます。

3チーム目。

3チーム目の点数は結構高かったです。割とバランスが良かったと思います。この会社の根本的な課題に共通していますが、これ、百貨店SPAを最初にやった会社なんですね。ということは、かつてはイノベイティブな会社だったわけです。しかし、ブランドのポートフォリオの回転も下がっているし、百貨店SPA以降、特にやってない。会社の新しいことをやっていく、あるいは、官能材を取り組んでいくうえでは、どうしても若さは大事ですが、この会社が持つべき若さや活力という部分がたぶん下がっています。おそらく、この会社が何となく調子が悪くなってきている一番根本の原因はそれです。これをリ・アクティベイトしていこうとすると、確かにこのチームが提示したように、ベンチャーみたいな活力を取り込むっていうことがクリティカルで正しいです。ある意味第4次産業革命の果実を取り込むような話ですよね。例えば、今被災地で気仙沼ニッティングという会社があって、気仙沼辺りのおばちゃんを集めて編み子をやらせて、実はすごい高収益企業になっています。これは、御手洗瑞子さんという、ブータンに行っていた若い女性が一人で立ち上げた企業です。これが何を意味しているかというと、第4次産業革命の時代がやってくると、お金がなくても、既存のモノがなくても、既に世の中に存在しているインターネットやクラウドといったインフラをうまく使うことによって、革命を起こせていけるわけです。そこそこうまくいっているベンチャーを買収しなくても、やり方によってはもっとお金を使わない方法で、第4次産業革命の果実を取り込むことができるかもしれないのです。結局、今の第4次産業革命で起きているのは、実は、IT、IoT的な、またはビッグデータの果実であるということは、すごく安いコストで社会的な公共資産として使える流れになっています。発想の転換、あるいは、そういう若い発想力をこの会社に取り込むってことを真剣にやっていけば、結構面白いことができるということを、この3チーム目は示唆していると思ったので、私自身はすごく面白いと思いました。

ということで、このチーム名は「Love Me 第4次産業革命」ということにしておきます。

2チーム目。ここが2位だったのかな。

おそらく問題の構造分析に関しては抜けて一番だったと思います。何がどういう問題構造なのかということに対する診断というか、構造分析については、たぶん全員共通で一番よくできていたという認識を持っていたと思います。そのあとの成長戦略とのつながりの部分がちょっとインパクトが弱かったというのが、優勝チームに負けてしまったところかもしれません。最後のところで「情熱で頑張る」と言ったところですが、これはリアルな問題で、お金のない会社なので、あそこで大胆なリストラをやることは僕も大賛成ですが、むしろ、黒字のブランドを売払ってキャッシュ作ってリストラした方がよかったのではないかと、ストレートに思いました。そこさえクリアしておけば、ひょっとすると一位に迫ったのかなと思います。情熱か銭勘定かということですが、辞めていく人にとっては残念ながら情熱は関係ありません。これはリストラするときに気を付けてください。会社が頑張りますからということで、残る人は納得してくれます。でも、辞めていく人にとっては「後は野となれ山となれ」です。これは必ずそうなります。最後はやっぱり銭勘定です。このシチュエーションにおいては。このリアリティはなかなかクリアできないので、そこは、ちゃんと持っておいたらいいのかなという気がします。

ということで、診断がしっかりしているチームなので「ドクターG」ということにしておきます。

最後、1チーム目。優勝チーム。

このチームがメイド・イン・ジャパンに目を付けたというのは僕も面白いなと思っています。先程の気仙沼ニッティングじゃないですが、日本の職人さんの縫製力は世界一です。だから、縫製する力、縫い手さんを例えばネットでうまくつないで、マス・カスタマイゼーションのところを上手につないで、それを世界中にアピールして、パターン・オーダーやカスタム・オーダーみたいなものをネットワークするって、これ結構革命ですよ。その匂いがちょっとしたところが、僕もすごく好感を持っています。

あと、最後は気合と根性で頭下げますというのも、リストラ相手よりむしろ銀行のほうが通用すると思います。

そして、最後のオチですが、これキャッシュの問題だというのはみなさん気が付いていましたが、なんで急にキャッシュが減っているか気が付きました?事業ベースの営業キャッシュはこの会社は黒字です。あれは、借金の返しすぎです、明らかに。借金を猛烈な勢いで返しているからキャッシュがなくなっているのです。一番簡単な方法は、実は、単に銀行に行ってリスケ頼めばいいのです。それでこの会社のキャッシュの問題は解決してしまいます。銀行も馬鹿じゃないから、この会社がこのペースで借金返すとキャッシュアウトすることは気が付いています。実はそういうオチがあるのです。気合と根性で銀行に頭下げるというのは間違ってないのです。銀行の立場からすると、このペースでお金を返されても全然うれしくないかもしれません。今、日本の銀行の最大の悩みはどんどん預貸比率が下がっていることです。お金を返されることはうれしくないのです、はっきり言って。また、マイナス金利ですから、この会社はプラス金利でそれなりに、金利さえ払ってくれれば、元本据え置きで構わないはずです。そういう交渉は十分成り立ちます。今、中国からの撤退も死ぬほど難しいので、無理に上海工場売却にエネルギーを使わずに、キャッシュの問題はとりあえず解消する可能性があるわけです。

ということで、このチームの名前は、最近ポケモンGOが流行っているので、ひっかけて、「Made in Japan GO! だめなら気合と根性」です。

 

最後に全体のまとめとして、繰り返しになりますが、このケースコンペティションの一つのキーワードは、再生にせよ成長にせよ、何らかのリアリティです。皆さんにはぜひ、実際の世界にいったら、現実のイノベーションを起こしてもらいたいです。現実のイノベーションを起こすにあたっての色々な意味でのハードルは日々下がっています。第4次産業革命の波がもし本当に日本や世界を覆うとすれば、ある意味では、どんな人にもザッカーバーグになれるチャンスが出てきます。あるいは、どの産業においても、例えば、自動車産業や電器産業のような巨大な資本がないとできないような産業、巨大な経験値がなければできないような産業が、そうではなくなっていく可能性が今、出てきています。むしろ、そういった領域で皆さんのような若い人たちが、ゼロベースで世界を変えていく、そういうオポチュニティが今、世界中で広がってきています。イノベーションとリアリティはよくトレード・オフの関係に見られます。確かに、20年前の自動車産業であれば、両者は二律背反だったかもしれません。しかし、イーロン・マスクのやっているのを見ればわかるように、あるいは、トヨタは今度パロアルトに研究所を作るわけで、それは、全く違うところから、まったく訳の分からない若者が出てきて、トヨタのような巨人でさえ倒されてしまうかもしれないと思っているから、あそこまで大胆なことをやっているわけです。これはかつてコンピュータ産業でも起きました。IBMがなぜ経営危機に陥ったか。それは、IBMの当時の競争相手であったユニシスでもなければ日立でも三菱のせいでもないのです。IBMが20年前に潰れそうになったのは、IBMの末端の事業だったパーソナルコンピュータの下請けだったインテルとマイクロソフトに殺されそうになったのです。インターネットの時代においては、今度それが、影も形もなかったGoogleやいったんつぶれかかったアップルによって、日本の電器メーカーはボコボコにやられました。今起きていることというのは、今までそういうことがなかった自動車産業や機械産業や建機やアパレルや、そういうところで一斉に起ころうとしています。これは最後にある意味お願いですが、こういうテーマを選んでいるということはそういうニュアンスも込めていますが、皆さん、ビジネススクールを卒業したら、会社に戻ってでもいいですし、新しい会社を興すのでもいいですし、あるいは、そういうベンチャーに参画してもいいのですけれども、今、世界を変えられるチャンスは全ての人の手元にあるので、ぜひ現実問題としてチャレンジしてもらえたら素晴らしいと思います。

以上です。ありがとうございました。