2022年度

 JBCCは 2022年で13回目を迎えました。新型コロナウイルス影響を鑑みて、感染対策に十分に配慮した形で、2019年ぶりとなるリアル会場でのプレゼンとオンラインを組み合わせた、JBCC大会史上初となるハイブリッド形式での開催をいたしました。

 今年のJBCCでは、国内外のビジネススクールから、大会史上最多タイである全国25校153チーム、711名の現役MBA生にエントリーいただきました。2022年のケース課題は、「大手SIer事業部長の立場から、医療・ヘルスケア業界の将来像を描き、事業戦略を提案する」ものです。 

 12月4日の本選大会では、9~10月に実施した予選を勝ち抜いた全国6校 20チームがセミファイナルを戦い、見事に勝ち抜いた5チームがグランドファイナルに進出し、豪華な審査員8名と手に汗握る質疑応答を繰り広げました。

実施 2022年12月04日(日)

青山学院大学 青山キャンパス 

YouTube Live同時配信)

 

【セミファイナル】Zoom会場(オンライン形式)

【グランドファイナル】青山学院大学 青山キャンパスとZoom会場(ハイブリッド形式)

日本ビジネススクール・ケース・コンペティション実行委員会

文部科学省、経済産業省、日経ビジネススクール、

デジタル庁、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

参加

【予選】25校 153チーム 711名

【本選】6校 20チーム    

来場

セミファイナル(YouTube Live)当日合計視聴者数 2,651名

グランドファイナル(YouTube Live)当日合計視聴者数 1,111名

計 3,762名

総再生回数 / 再生時間

2022/01/09 時点

累計総再生回数 12,291回

累計総再生時間 3,707時間

特別協賛

株式会社 経営共創基盤 (IGPI)

協 賛

※順不同

倉島事業開発株式会社

株式会社日本創生投資

株式会社中島商会

株式会社ファーストデコ

株式会社トリプルバリュー(副賞あり)

株式会社ダイヤモンド社(副賞あり)

株式会社コーポレイトディレクション

株式会社グローバルインフォメーション

株式会社キューブアンドカンパニー

株式会社インスプレース

株式会社Milkyways

ビルコム株式会社

ビズアクセル株式会社

TESSグループ

株式会社ZART

株式会社河島本家

BIP株式会社

楽読 一宮駅前スクール

株式会社医学生物学研究所

株式会社プレアス

株式会社イエムラ

株式会社人事のまなび場

株式会社リーディングマーク

医療法人社団クリノヴェイション

フューチャー株式会社

株式会社ゼロワンブースター

有限会社 平川食品工業

インタセクト・コミュニケーションズ株式会社

株式会社廣屋羅紗店

株式会社ユー・タチ

一般財団法人 日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)

株式会社ワンオーダー

株式会社White Knight

ヨカタラ株式会社

株式会社コモディイイダ

つばめ投資顧問合同会社

Rally Growth株式会社

一般社団法人POIESIS

ヤマキタ森林ベンチャー株式会社

ウインドミル・エデュケイションズ株式会社

株式会社ゴールデンエイジ

特別協力

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科

協 力

※順不同

株式会社PANDASTUDIO.TV

株式会社Radiance

ケース作成協力

※順不同

株式会社経営共創基盤 (IGPI)

 

本選の結果

セミファイナル出場チーム(エントリーNo順)

Aブロック

No.004 グロービス経営大学院 東京校 倉石 洸チーム

No.036 グロービス経営大学院 仙台校 鈴木 健志チーム
No.088 青山学院大学大学院 伊藤 雄太郎チーム
No.103 京都大学大学院 中嶋 新チーム

 

Bブロック

No.037 グロービス経営大学院 大阪校 飯島 直純チーム
No.043 グロービス経営大学院 名古屋校 足立 直樹チーム
No.120 ビジネス・ブレークスルー大学大学院 寺井 尚孝チーム
No.153 グロービス経営大学院 オンライン 足立 厚チーム

 

Cブロック

No.033 グロービス経営大学院 東京校 山岸 博子チーム
No.041 グロービス経営大学院 東京校 福田 武司チーム
No.067 神戸大学大学院 村上 大祐チーム
No.144 グロービス経営大学院 大阪校 尾崎 隆人チーム

 

Dブロック

No.021 グロービス経営大学院 東京校 鈴木 孝政チーム

No.024 グロービス経営大学院 東京校 美澤 佑佳チーム
No.093 中央大学専門職大学院  澤田 義麿チーム
No.114 青山学院大学大学院 巌谷 真穂チーム

 

Eブロック

No.005 グロービス経営大学院 東京校 元泉 博チーム

No.007 グロービス経営大学院 大阪校 村岡 侑哉チーム
No.065 グロービス経営大学院 名古屋校 足立 るみのチーム
No.071 立教大学大学院 篠崎  徹チーム

 

発表順は事前の抽選により決定しました。  

赤字が1位通過(グランドファイナル出場)チームです。

本選当日の様子

9:00 - 9:15  開会式

9:15 - 12:15  セミファイナル

12:30 - 18:00  グランドファイナル

受賞チーム

優勝・文部科学大臣賞

DIAMOND・ハーバード・ビジネス・レビュー賞 / 視聴者

青山学院大学大学院 巌谷 真穂チーム


(優勝コメント)

 青山学院大学大学院 巌谷チームです。本来、チームリーダーの巌谷がご挨拶させていただくべきですが、ちょっと感極まっていますので単純に有森が年長者ということで代弁させていただきます。

 まずは、このような勉強の機会をいただきましたJBCC実行委員の皆様、本当にありがとうございました。また、本日お忙しい中審査にお集まりいただいた審査員の方々、本当に勉強になりました。ありがとうございました。今回こうして賞をいただけたのは我々だけの力ではないと思っており、ABSのMBAコースの先生方にもアドバイスいただきましたし、OBの方や先輩同級生、友人も含めて総動員で取った賞であり、ABSの結晶だと思っております。

 勝因を考えたとき、まだ整理がついていませんが、運もあると思いますし、我々もかなり努力しましたし、睡眠時間をかなり削りました。

実は、プレゼンテーションをさせていただいたとき、すごく気持ちよくて、これまでの練習の中で一番いいプレゼンができました。巌谷さん含め、質疑でコメントしたものを含め、すごくいい雰囲気でプレゼンできたというのがあり、それは審査員の先生方から優しい視線を頂いていたからであり、それが勝因だと思っております。学びはこれで終わるわけではなく、引き続き学び続けていきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

 

(DIAMOND・ハーバード・ビジネス・レビュー賞 受賞コメント)

 大変光栄な賞をいただきましてありがとうございます。冒頭におっしゃっていただいたように、私達のチームは、ここ一週間ぐらいは一度できた資料を何回も何回も作り直して、わかりやすさとストーリー性をすごく突き詰めてきました。そこが伝わりすごく嬉しかったです。ありがとうございます。

 

(視聴者賞 受賞コメント)

 青山学院大学大学院の秋山と申します。本日はこのような機会をいただきまして、まず皆様にお礼申し上げます。またこのような視聴者賞、ホームというところもあったかもししれませんが、263票のうち81票いただけたこと、それが審査員の方々もそうですし、YouTubeを通して視聴者の方々にもご支持いただけたことは本当に我々として嬉しく思います。先ほど巌谷も申しました通り、「お伝えする」ということを本当に詰めてまいりました。

 予選の時も、一度できたものをもう一度みんなで叩き潰して、またそれから作り直して、叩いて、と、繰り返してまいりました。この一週間も本当にそれを繰り返しながらやってまいりましたので、それがこういう結果に繋がったのかなと思います。本当にありがとうございました。

準優勝

グロービス経営大学院 東京校 倉石 洸チーム


(準優勝コメント)

 グロービス経営大学院東京校 倉石チームの倉石でございます。この度はこのような栄誉ある賞をありがとうございます。このような機会を下さった事務局の皆様、お忙しい中、審査いただきました審査員の皆様、そして我々ケースを取り組むに当たり、色々な方の力を借りました。

その全ての皆様に対してここで感謝申し上げます。本当にこの度は貴重な賞をいただきましてありがとうございました。

ABSアルムナイ賞 / トリプルバリューエンゲージメント賞 / 日経ビジネススクール賞

グロービス経営大学院 名古屋校 足立 るみのチーム


(ABSアルムナイ賞  受賞コメント)

 グロービス経営大学院名古屋校 足立チームの足立るみのと申します。今回はこのような賞をいただけて本当に光栄です。

先ほど、ビジョンのところをお話いただきましたが、私達としても誰1人取り残さない、医療ヘルスケア体制を世界で作るところには本当にこだわってきておりましたので、このように評価していただけたことは、本当に嬉しく思います。

いろんな皆様にご協力をいただいて、取ることができた賞です。みんなで取った賞をもって名古屋校へ帰りたいと思います。ありがとうございました。

 

(トリプルバリューエンゲージメント賞 受賞コメント )

 グロービス経営大学院名古屋校 足立チーム 西村です。今回は素敵な賞を本当にありがとうございます。今のお話を聞いて嬉しかったのが、「ワクワクした」とおっしゃったところで、我々はそこをすごく意識していて、この戦略でワクワクできるかどうかをかなり議論してきました。

最初から、アフリカや、大きな改革の話に行き着いたわけではなくて、オプションを出した中で、分析をしていくと厳しいところも出てくるのですが、それでもやり切りたいと思えるようなストーリーが作れているかという点は夜な夜な話し合っていたところでもあり、「ワクワクする」と言っていただき、本当に嬉しかったですし、聞いて下さった方の中に、そういうふうに思ってくださる方がいたことが、本当に嬉しいと感じました。どうもありがとうございます。

 

(日経ビジネススクール賞 受賞コメント)

 グロービス経営大学院名古屋校 足立チームの小笠原と申します。今回はこのような素晴らしい賞を頂きまして、ありがとうございます。

ご講評でいただいた通り、たくさんの方々に今回インタビューさせていただきました。本当に直近までインタビューを続け、昨日の朝の10時ぐらいまで粘り強く、色々な方にお話しを聞かせていただきました。皆様、お忙しいにも関わらず、私達のビジネスプランを聞いて下さり、色んなコメント下さったり、自分達の苦しさ、大変さ、でも素晴らしい世界なんだよっていうことを言って頂き、本当にビジネスプランを立てることが楽しい期間になりました。そんな方々に今日はお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 


審査員講評

 ※ご所属・肩書は2022年12月4日当時のものです

日本電気株式株式会社 執行役員常務 社会公共ビジネスユニット担当
雨宮 邦和 様

 皆様お疲れ様でした。5チームとも本当に素晴らしい内容だったと思います。

足立るみのさんのチームが印象に残っていまして、グローバルというのもありましたが、210億の営業利益を上げてくれるのだと思いました。村上さんのチームも高かったですね。帰ったらうちのチームにも210億と言っておきたいと思います。

 内容的に参考にさせていただきたいものも多々ありました。その際は一緒にいろいろ協力させていただければと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 

 

小林製薬株式会社 社外取締役
株式会社きらぼし銀行 社外監査役
ウシオ電機株式会社 社外取締役
有泉 池秋 様

 皆さん本当にお疲れ様でした。優勝なさったABSの巌谷チームの皆さん、本当におめでとうございます。私ももらい涙でちょっとウルウルしてしまいました。

 全体の講評ですけれども今回のテーマはまず本当にスケールが大きくて難しかったと思います。課題山積、環境激変の医療ヘルスケア産業を舞台に両利きの経営と社会課題への貢献を問うというお題だったので、そこに皆さんがどう挑戦なさるのかなって大変興味深くプレゼンを聞かせていただきました。グランドファイナルに残られたチームだけあってどのチームも高い問題意識を持たれて、しっかりしたビジネスプランを練り上げていらっしゃるなと思ってお聞きしておりました。

 その中で私がどんな視点を中心にしながらプレゼンを聞き、審査したかということをご説明させていただきたいと思います。このケースの難しさにも繋がっているのですが、一つは既存の医療システムっていうのが本当に複雑に既得権益も含めて絡み合っていて、その中に風穴を開けるのは本当に難しいんですね。新しいシステムを社会実装していくという、ちっちゃなビジネスじゃなくてまさにシステムの社会実装という大きなことを成し遂げていかなきゃいけない。そういう難度が高いところをどういうふうに現実的かつ効果的なアプローチを仕立てながら工夫なさっているか。現実性・効果性、そこら辺が解像度高く考えられているかなっていうのを注目させていただきました。特に各ステークホルダーへ変化を促す働きかけの工夫ですとか。短期中期長期の打ち手っていうのが本当に有機的に時系列を追って実を結んでいくような戦略的なストーリー仕立てができているか。そういったところなんかも注目させていただきました。

 

 もう一つが、社会インパクトの大きさっていうところは半分個人的な思いもあって注目させていただきました。これはビジネスの立場から考えると本当に難しい話ですよね。例えば医療情報プラットフォームって言っても、それを全体の価値を高めるっていう社会的要請がある一方、ここの要請の中には標準化とかオープン化は必ず伴われるわけです。一方でビジネスの方からしたら、自社の収益性を追求するために差別化とか囲い込みっていうことを当然方向性として考えていく。そのトレードオフがあって、どう着地して見つけていくのかなっていうのにすごく興味がありました。

 もう一つは、チームのいろいろな方がミッションとして掲げている、全ての国民に届けたい、誰1人取り残されないっていう言葉がよく出てきます。そういうときにビジネスの価格設定どうするのかな、差別化どうするのかっていうところも考えどころだなと思ってお聞きしていました。そういう難しい着眼点がいろいろあったのですけれども、やはり産業全体の変化もリードすべく、トレードオフということじゃなくて昇華させていって全体最適化を追求していただきたいなと期待してお聞きしていました。どのチームも、その辺果敢にチャレンジ・工夫をしていらっしゃって、さすがだなと思ってお聞きしていた次第です。本当にもう皆さんの数ヶ月、半年ぐらいの行動力ですかね。本当に心から称えたいなと思っております。

 

 最後に事務局の皆さんの健闘も称えたいと思っております。実は私は今年の春までここ青学のキャンパスでMBA生をしていた学生でした。それなのに今ここに審査員で座っててなんか申し訳ないのですけど。そのときの同級生も事務局で活躍を何人かしてくださってます。彼らからこの事務局の皆様の熱量高いコミットメントがいかにすごいかってのはよくお聞きしていたので、この場でご一緒できてることがすごく感慨深いなと思っています。本当に全てのMBA生の皆様そして事務局の皆さん、本当にお疲れ様でした。どうもありがとうございました。

 

株式会社コーポレイト ディレクション エグゼクティブコンサルタント
小川 達大 様

 5チームの皆様お疲れ様でした。全てのチームが素晴らしかったです。まず初めにリアル会場は3年ぶりです。やっぱりリアル会場は本当に熱量があって、素晴らしいなと思いました。実行委員の皆さんも本当にお疲れさまです。この3年間はオンラインで開催されていたということなので、その間そのオンライン会場で実行委員をされていた方がいらっしゃって、そのたすきが繋がれるような形でリアルの現場に戻ってきたということなのかなと感じました。

 3年間、いわゆるこのコロナ時期の私達が体感したことっていうのは、なかなか日本の医療業界は難しくて。市民の人々からすると、普通こうなっている方がいいよね、と思うことがなかなかそうならなかったということを目の当たりにしてきた3年間と思いました。

 この領域というのはパブリックとビジネスがちょうど交差している部分で、様々なステークホルダーがいる中でとても複雑に存在している。そのテーマでビジネスをしていくのだとすると、その複雑な様々な関係者がどういうふうに動いてくれればものが前に進むかなというところ。業界全体、社会全体の大構造をしっかり理解をして、そこに潜んでいる力学をちゃんと見抜くのがとても大事なのだと思います。

 

 いわゆる政府が発表していることだとか、業界が言っていることを100%鵜呑みにして、それを前提に戦略を立てるというのは現実的ではないのだろうなと思います。そこを動かしていくためには相当な努力、コストが必要ということになると思います。私が審査するときの基準というと、その業界のリアリティというところをどれだけつぶさに見ているかというところ。それを突破するにあたってのいわゆる人のかけ方、費用のかけ方、そこのリアリティというところをしっかり見させていただいた。そういった意味で準優勝という優勝の2チームが少し頭を出ていたかなという印象を持ちました。

 唯一この準優勝と優勝を隔てる何かがあったとすると、倉石チームの皆様はお揃いのTシャツを着ていたのに最後までそれを見せてくれなかった。これ脱いでいたら優勝だったかなとか思ったりしていました。お疲れ様でした。ありがとうございました。

 

株式会社ダイヤモンド社 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 編集部
編集長
小島 健志 様

 皆さん大変お疲れ様でした。今私の世代もそうなのですけど、一番足りないのはチャレンジだと思っています。その点で、いかにチャレンジしていくのかというところを、現実感を見ながら示していく。多様なステークホルダーを巻き込んでいくことは、これからの経営で求められているとHBR(ハーバードビジネスレビュー)で言われています。上位のチームの方は、やはりそこが際立っていたかなというふうに思います。

 一方で、私がここで強調させていただきたいのは実行委員の皆様の努力です。運営されていく中でかなり私自身もコミュニケーションさせていただいて。特に今回、メルマガやったらいいんじゃないですか、といったことを簡単なノリで言ってしまって。それを実行委員の皆さんが、本気で受け止めていただいて。ちゃんと契約を整備して、皆さんにお送りして。それが開封率80%という見事な結果を残された。我々メディアの商売で言うと、メルマガビジネス出来るじゃないかというふうにも見える。裏側でも、チャレンジしているのは本当に素晴らしいなと思いました。そういう、皆さん知的な挑戦っていうのを続けていっていただくのが、日本の産業の底上げになっていくと思いますので、ぜひ今後とも繋げていっていただければと思います。どうもありがとうございました。

 

株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役CEO
八子 知礼 様

 ABS 巌谷チームお疲れ様でした。おめでとうございます。本当に皆様各5チームとも、非常に短い短期間の中で法的制約も多く、政治的にもしがらみが多く、難しい医療ヘルスケア業界の課題の棚卸とその戦略の策定をよくまとめられていたのではないかなと。ビジュアル的にもコンサル長くやってきた自分からしても、ああいう表現はあるよなと思いながら、非常に良いインプレッションをいただきました。

 今回皆さんが掲げておられたのは、健康な人を増やす、医療コストを下げる、今言われているESG観点をデジタルでどうするのか、というところをふんだんに取り入れて検討されていたところが非常に印象的だったと思います。どうしても自社の戦略にこだわってしまう都合上、プロダクトアウトな視点が多かったかなと思うので、ぜひとも最終的な患者がどうなっていくのか、患者のメリットはどうなっていくのか。もしくは競合であるNECさん、富士通さんであるとか、そういったビッグネームの企業ともどうやって戦っていけば良いのかというような視点も入れていただいて多様なオプションを検討していただくことも必要になってくるのではないかなと思いながら聞いていました。実務面ではそういったところを網羅的に検証することがなかなか難しいので、今MBAだからこそ、色々多面的なオプションを検討して考えていただければと思います。

 またデータビジネスを今回皆さん検討していただいていますが、結構お金がかかります。自分もコマツさんのLANDLOG(ランドログ)をはじめとして、オープンプラットフォームのデータビジネス、たくさん関与させていただいています。非常に一社でやっていく上では、金がかかりますし、そういった観点からすると、社会課題をみんなで解決していこうじゃないかというオープンプラットフォーム化を意図した、いかにもなデータビジネスだけじゃなく、この日本国内での様々な業界の課題を解決していくために、オープンプラットフォーム型で推進していかなければならないというのを感じながら今日皆さんのお話を伺っていました。今回初めての審査員で、DXに関して何かコメントせよというミッション背負っていたと思っています。DXであるとかデータ活用観点のコメント中心でさせていただきました。少し経営関連というよりはそちらの方に寄っていたかもしれません。

 ぜひ今日が最後ではなくて、中身がかなり充実していたものでしたので、チームでそれをより具体的に検討するであるとか、もしくはMBAのコースがあけた暁にはそういった医療ヘルスケア業界に転身をするとか。そういったところも含めて社会課題を解決すべくアクションをとっていっていただきたいなと。そういったMBA生であっていただきたいと思っています。

 また最後になりますが、データを使った新ビジネス創出というものについては弊社もぜひやっております。人の採用、絶賛募集中でございますのでお声掛けいただければと思っております。お疲れ様でした。ありがとうございました。

 

ハッシュピーク株式会社 代表取締役
前田 琢磨 様

 皆さん大変お疲れ様でした。本日拝見していて、力作ばかりで。特に慣れない業界でかつ調べても非常にわかりにくい業界だと思います。そういった中でよく調査されて研究されて、それを戦略に結びつけている。本当に皆さん多大な時間と熱量の中でやられたのだなと感じました。私もとてもエネルギーをもらった次第です。

 

 まず準優勝チームの方々。極めて野心的な利益率、これでもう審査員の心を鷲掴みにしたみたいな気がするのですが、加えてSDGSとか極めて大きな課題に取り組もうというところが非常に良かったと思います。

 そして優勝チーム。ストーリーがわかりやすくて、引き込まれるような感じでプレゼンテーションを聞かせて頂きました。内容も医科歯科連携とか、先端な話をしていると思っています。最近ですと、慶応大学と東京歯科大学が一緒になっていくとか、あとこれはどちらかというと医工連携に近いのですが、東工大と東京医科歯科大学が一緒に組んでいこうとか、そういう流れがありますのでトレンドを掴んでるような感じがしました。あとブロックチェーンという新しい技術。ハッシュピーク社がブロックチェーンやっているからといって私はそこを押しているってつもりはないですけれども、そういった新しい技術についてもきちっと説明できるよう取り込んでいまして、それも非常に好印象と受け止めております。この優勝チームにしかなくて他のチームになかったのは、有識者会議への発表のまとめ。このチームだけちゃんとスライドが用意してあった。ちゃんと課題に対するところをきっちり満たしてきているというところも私の中では高評価になっております。

 

 私自身医療データビジネスに10年ほどやっているのですけれども、一つ肝に銘じなきゃいけないという、このビジネスで本当に意識しなきゃいけないっていうのが、規制産業であるということ。厚生労働省から出ている医療情報システムの安全管理に関するガイドラインというのがあります。その中に明確に書いてあることがありまして、医療機関などで強く意識しなくてはならないことは、「情報伝送するまでの医療情報の管理責任は送信元の医療機関などにある。」って書いてあります。ですから電子カルテビジネスをやっているから、とか簡単にできるビジネスではないです。データっていうのはあくまでも患者さんから出てきたデータ。そして医療従事者がそれをきちっと正しいやり方で集めたデータ。これをお預かりするというところ。そこでビジネスをするというところ。その上で何ができるか、世の中のためにできるかっていうこと、非常に気をつけなければいけないところだと思います。

もう一つがですねデータビジネスっていうのはネットワーク外部性があります。どういうことかというとデータがある人から、データを購入するというモデルです。ですから、これからデータを集めます。つきましては、お金をください。と言ってはそれでは成立しないですね。集まった人から買うというビジネスなので、先にシェアを取っているってことは、そこにもうネットワーク外部性は存在しているというものです。そういったところも意識しながら聞いていまして、これできるかな、できないかな。というような思いを持ちながらも聞いておりました。

 いずれにしましてもそんな中で非常によく勉強されて、素晴らしい発表。ここまで本選まで残った皆さん、セミファイナルに参加の皆さん。かつ準優勝、優勝した皆さん本当におめでとうございます。ありがとうございました。

 

株式会社経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター
木村 尚敬 様

 皆さん大変お疲れ様でした。リアルは良いですね、3 期振りですか。ここでのプレゼンを見て本当に私も感動しました。熱い思いを持たせていただきました。

私は毎年同じですがDAY1から関与しています。「今年何しましょうか?」ということで2月に最初のキックオフがあってそこからケースの作成から始まって全部やっていますので、グランドファイナルの方々だけではなくて 、今回153チーム711名。それから25校っていうのは去年に引き続き最多です。非常に大きな広がりを持っておりますので、その全員の方に向けてフィードバックをさせていただければと思います。

 

今日のチームもそうですけど、良かった点は(審査員の)皆さん話されていますけど、ヘルスケア領域ということで、単純にビジネスエコノミクスで「儲けりゃいいじゃん」というよりかは、社会課題解決というところで、経済価値と社会価値のバランスを取りながら皆さん打ち手を打っていただいたということが非常に良かったのかなという点です。

2点目、皆さん本当によく調べていらっしゃいました。プレゼンテーションで出た資料だけではなくて、アペンディクスで皆さん裏につけている資料を私も全部見ていますけど、皆さんすごく調べられて分析もされているということで、相当な熱量をこれに使われたのだろうなということが分かりました。ぜひ普段のケースにも同じ熱量を使ってください。

3点目はプレゼンテーション。特に、グランドファイナルのチームの皆さんは、本当にプレゼンテーションがお上手で、ぴったり15分で収める。相当練習しているのだなと思いましたけども、非常に素晴らしかったと思います。本当に生々しくて、私も感動しました。

それから全体を通してもう少しこの当たりを意識されると良かったのかなというところで、競争の視点、ビジネスモデルの視点、それから今回のテーマでありますコーポレートトランスフォーメーション=CXの視点からお話をします。

 

競争の視点でいうと皆さん議論が出ていますけど、一つ目は勝てる論拠という話です。要は「なんで勝てるのですか?」というところがあまりクリアじゃない。例えば、「成長が著しい中小領域のクラウドに出ていきます」。これ、はっきり言ってレッドオーシャンなのです。当社が後発として出て行ってなぜ勝てるのですか、というストーリーが明確じゃなくて、ここが空いているからいきます、という話はもうちょっと肉付けが欲しかった。デジタル領域のデータ利活用はおそらく富士通さんでもNECさんでも同じ議論しているはずで、「当社のユニークネスはどこにあるのですか?」というところがもう少し欲しかったなと思います。

2点目、ビジネスモデルの視点で申し上げますとユニークネスに絡むのですが、去年のケースにもありますけれども、アーキテクチャーというものを考える必要があるのかなと思いました。『DXの思考法』の本に書いてあるとおり、デジタル化というのはレイヤー構造化していくのです。皆さん、そのデータ利活用の垂直統合型など、自分の事業モデルの中で考えていらっしゃるように感じたのですが、例えば自治体に寄っていくとなった時に、自治体の中の病院っていうのは当社・湯川だけのシステムを使ってい(るわけでは)ない病院だってあるわけで、その中のデータをどうやって担ぎますかとか。それからいろんな意味で自社だけではないデータのレイヤー構造化が進んでいくので、自分達がデータレイヤーを獲るのか、その上のアルゴリズムレイヤーを獲るのか、もしくはアプリケーションのところで頑張るのか。その当たりの産業全体を見据えた、これがインダストリアルトランスフォーメーショ=IXになるのですけども、「全体を見た上でどこを獲るのですか?」という議論がもうちょっとあってもいいかなと思いました。

あと医療というところで言いますと、お金を払う人とベネフィシャリー=受益者が一対一の対応になってないのです。患者さんがいて、お医者さんがいて、看護師さんがいて。経営主体の病院があって、保険会社があって、国・政府があって。というような中でお金を払う人も色々まちまちで、これを繋ぐというのがなかなか難しいです。患者さんにとって利便性があることが必ずしもお医者さんにとって良いことではないし、病院経営にとって良いことでもない。この色んな関係性をどう紐解くかということが難しいところです。

最後、コーポレートトランスフォーメーション。先のレイヤー構造化で言うと、グランドデザインとストーリーデザイン。アーキテクチャー全体の中でどこを獲りに行くのか、10年後何をやっていきたいのかをどこまで描けるかということと、そこに向けたストーリーです。どちらのチームも短期・中期・長期と書かれていますけれども、短期は短期、中期は中期、長期は長期となっているチームが多かったので、このストーリー性というものがどう繋がっていくのかというところが(意識されると良かったことの)一つ。

最後が組織能力の話です。これは私が途中質問しましたけれども、実際にコーポレートトランスフォーメーションをしていこうとなると、その事業だけではなくて組織、人のトランスフォーメーションも重要になってきます。ここが実際のリアルケースにおいても非常に生々しい話になってきまして、ここに対峙しないと実は「なんちゃって」になってしまいますので、こことどう向き合うかというのが大きなポイントになってくるかなと思います。

セミファイナル、グランドファイナルに残られたチームというのは、ここら辺のリアリティが非常に高かったチームです。残念ながら予選通過できなかったチームはここら辺の全体の解像度が弱かったチームということなので、改めて皆さん全チームの方々、ご自身のレポートを振り返っていただければ良いかと思います。

 

最後に実行委員会の皆さん、本当にお疲れ様でした。特にケース班の皆様とは2週間に1 回。皆業務時間中は忙しくてできなくて打合せが毎回日曜日の夜9時からでした。日曜日の夜9時から2週間に1回オンラインをやるということを半年続けてここまで辿り着いています。そういう意味で言うと、年明けすぐに振り返りと申し送りのミーティングがあって2月にはまたキックオフがあると思います。ボランティアでやってくださっている実行委員の方がいらっしゃるからこそこの大会が続いておりますので、是非次の世代にまたバトンを渡していただければと思っています。

私からは以上です。どうもありがとうございました。

 

株式会社経営共創基盤 共同経営者 IGPIグループ会長
冨山 和彦 様

  本当に皆さんお疲れ様でした。いよいよ(毎年恒例の、各チームに)あだ名をつける時間がやってきました。私は今政府の官邸の会議で、実は全世代社会保障会議のメンバーやってまして、何人かの方がおっしゃったように、これがとにかく複雑怪奇な世界なんですよ(もう一方、割と目立っているのは新しい資本主義とかってやつですね)。もう制度的にも複雑だし、利害関係も複雑だし。さっき木村さんが言ってたみたいに、サービスの受け手とお金の出元がずれるんですね。そういった意味で言うと、通常の市場経済だけでは論じられない、極めて複雑怪奇なエコノミクスなんです。これは、市場で取引されるものと公共財というものが本当に入り組んじゃってて、特に日本は独特であります。アメリカはほぼ両方とも市場財的に扱う国なんですね。当然批判もあるんだけど良くもある。ヨーロッパはどちらかというと、医者の開業も規制されてますし、かなりもうガチガチに規制されてる世界なんです。日本はちょうど極めて混合型なんで、だから最も複雑回避になる仕組を背負っているんですが、その中で今回のケースのようなビジネスを考えていくっていうのは本当に大変なことで、だから本当に良くあれだけ調べたなって私も感心して聞いていました。いかに理解するまでが大変かということは私もよく分かってるつもりなんで、本当にお疲れ様でした。あとケースを作った人達も大変だったと思います、本当にお疲れ様でした。

 

全体講評、(これまでのコメントと)被らないところだけ話をしますね。エコノミクスの脈絡で言うと、さっき前田さんもおっしゃってましたが、実はクラウドでも結構お金かかるんですよ。データアクイジションとクレンジングとそれから顧客獲得。その脈絡で言うならば、手元流動性があるからお金足りますよっていうのは、ちょっとそれは安易すぎてですね。実はあの領域に出ていくと、特に後発の場合にはかなり猛烈に先行投資が必要になる可能性があるので、そこのエコノミクスは ちょっと甘いと思いました。(データビジネスといえば)なんとなくこうバーっと自動的にデータが集まって、自動的にお客さんも良いクラウド用意したらバーっと入ってくれるっていう感じ(のイメージ)ですけど、今はもう猛烈な取り合いのためにものすごい顧客獲得投資でお金を使っています。それこそ普通の勘定系のクラウド領域であっても、実は先行的にはめちゃくちゃ金食い虫の事業になります。加えて途中から外部性が働き始めるので、働き始めた人たちと働き始めない人たちの間で、めちゃめちゃ格差がつく。そういうタイプの事業領域なので、そこは、もしこの後皆さんがベンチャーを興される時には(この点を)すごく意識されたらいいんじゃないかなと思います。

 

それと、おそらくこの後DXがすごく逆に生きてくる領域というのは、多かれ少なかれこういう社会課題解決型の領域になっちゃうんですよね。実は交通関係の自動運転なんかも実はある意味で、あれは社会課題解決に挑戦してるんですね。これは環境の問題もありますし、もちろん人手が足りなくなってくるという問題もあります。あるいは、地域・地方に行きますと過疎化の中でどうやって地域公共交通を維持するのかという問題になってきます。こういったMaasの問題は、本質的にそこに実はカギがあって、そこで当然DXを使うってことになるんです。ですからこの後(JBCCに挑戦されたMBA学生の)皆さんがひょっとするとこのDXの破壊的イノベーション領域に挑戦していくときにはですね、多かれ少なかれ、純粋市場財ではない、半ば公共財と交錯した領域でビジネスをやっていくってことになるかと思います。そういった意味ではものすごくこれは良い準備運動になったんじゃないのかなって気はします。今までのDXの生み出した領域っていうのは、完全に自由市場財的な領域、要するにエンターテインメントなんで。言っちゃなんだけど、別に(アップルの)iTunesが落ちたからって人は死なないんですよ、例えば。それに対して、今回のケースのような領域というのは、人の命に関わる問題を扱ってますので、お気楽にOODAループを回していればいいって話じゃないんですよね。そういった意味で、多分皆さんがこれから新しいことに挑戦する場合にはーこれは大企業の中であろうが、ベンチャーだろうが、かなりの確率でこういう領域になると思うので―ぜひともJBCCで経験したことっていうのは、決勝で残られた方、あるいはそれ以外の参加者の方もですね、大変素晴らしいシミュレーションになったと思いますので、そこはぜひとも今後に活かしもらえればと思います。

 

ここから先はチーム別にいきます。

最初にやった足立チームですね、混成チーム。こういうチーム編成もありだなと思って、そこは一つのイノベーションを起こしてくれたっていう意味で言うと、個人的にはその意味で賞をあげたいチームです。私はちょっと「おっ」と思いました、本当に。中身なんですけど、オールラウンダー的な、ある種まとまりのあったプレゼンテーションだと僕は評価しています。ただ、その分ですね、まとまってる分、さっきちょっと木村さんが言ってた、例えばコーポレートトランスフォーメーション的な意味で言うと、ちょっとまだ甘いとこがあるんですね。全社で新規事業プランコンテストやるんでしたっけ?コンテストやる程度で済むのか?って言うとですね、多分厳しい部分があると思います。(湯川電子技研のような会社が)あそこのチームで言っているようなことに挑戦しようと思うと、私よく例えで使うんですが、野球チームがいきなりサッカーチームを作ってワールドカップに出るようなことをやろうとしてるんですよ、これ。皆そうなんですよ、ほとんどのチームがそうなんです。データ(のビジネス領域)に出てくるとか。クラウド(のビジネス領域)はまだどうかな、野球から見たらクリケットぐらいの違いかもしれませんけど、もうデータになっちゃうとこれは完全サッカーなんで。ですから全社で集まってコンテストやったからどうなるってことでもないんです。ある意味ですごく“down-to-earth”なプレゼンテーションだったんだけども、やろうとしていることがかなりチャレンジングだという意味で、私の希望としてはですね、もっとかなり深掘りした大胆な革命的なトランスフォーメーションにチャレンジして、世の中へメッセージが欲しいということで(それが付いてくるとかなり良いプレゼンだと思ったんです)、チーム名は「もっと革命を」ということにしました。

 

次に2つ目巌谷 チーム、これは優勝チームかな。このチームに関しては、ストーリー的に良くできていて、あのビジョナリーなところが評価されたんじゃないかと思います。1つはビジョナリーストーリーとしてすごく説得力があったというところと、それから歯医者領域に出ていくっていうのは1つの発想の転換でした。それが現実にワークするかどうかはともかくとして、ああいう視点っていうのは確かに戦略的にものを考える時には大事なんですね。要はあの、やっぱり与件、一般的・常識的な与件をできるだけ外すということは、1つの戦略的思考の重要なポイントなんです。実はこういった規制領域っていうのはいっぱい与件があるんですけどもね。ただ、その規制も場合によって最終的にはどけにいかなきゃいけない部分があって。これは私自身のケースで言っちゃうと、産業再生機構の時にはやっぱり従来の金融システムがどんどん壊れていく時代で、一般的な与件はある種政治的にも外していった経緯があるんですね。あのちょっと生々しいケースで言っちゃうと、会計的な考え方も当時すごいバトルがあってですね。要は銀行が取っている担保を取得原価主義で評価するのか、時価で評価するのかっていうのは、まさにすげえバトっていました。冷静に考えたら担保って最後に困ったら売って回収するんで時価に決まってるんですけど、それまでの日本の金融システムというのは取得原価主義で成り立っていたんですね。これを壊すというのは金融システムの破壊だ、なんてことで、えらい勢いで僕は怒られたんですけど、だけどある種のこれは規制改革なんですよね。規制を変えてくっていうチャレンジで、私はそこは挑戦する価値があると思っていたし、当時の小泉政権はそれをサポートする側に回ってくれたんで、まあある種のブレイクスルーができました。要はとにかく従来の与件を外してああいうことを考えるということを私は素晴らしいと思いました。そういった意味で、私は歯医者のところが発想として気に入っちゃったんで、チーム名はですね、これ一般医療も歯医者もどちらもやるってことなんで、「目には目を歯にも目を」ということにしました。

 

今度は村上チームかな。村上チームは、多分政策提言レポートとしてはこのチームが一番良くできていたと思いました。チームとして相当そこに力を入れたんじゃないですかね。さっき言った全世代型社会保障会議に出したら、多分皆さんのレポートが1位を取っていたと思います。そこは大変しっかりしていたんですけども、ビジネス的な部分でちょっとフォーカスが内に行っちゃった分、やや“down-to-earth”というか、そこの訴求力が弱かったのかなっていう感じがちょっとしています。これ難しいんですよね。これどっちも必要なテーマなので、ものの深さとか難しさという意味で言っちゃうと、マクロ政策提言なんてすげえ難しい世界なんです。その1つの側面としてミクロな電子カルテが存在しているので、このマクロ・ミクロの視点はどっちも必要なケースではありますが、結果的にマクロの方に偏ってたかなという感じがしています。マクロ的な視点からDX的な側面を割と表に出してたんですけど、その脈略で言っちゃうとさっきの組織能力的なトランスフォーメーションのストレスに対する見方がちょっと弱かったかなって感じはしました。くどいですけど、やっぱりかなり相当強烈なコーポレートトランスメーションをしないと、サッカーの世界でワールド カップに出られないんで。そこはこれ、(いずれのチームも)皆さん共通してますけど、ここの難しさと大変さ、実は多分一番時間かかるのはこれ(組織能力のアップデート)なんですよ。今の手持ちの駒、手持ちの資源で戦略的な立ち位置を変えるというのは、比較的3年とか5年っていう中計の時間軸でできるんですね。ところが、野球選手しかいない組織が、特に日本みたいな終身雇用型の人の入れ替えが難しい社会システムの国で、サッカーでそれこそワールドカップに出ようとかチャンピオンズリーグ出ようってことを考えると、既存企業は結構大変なんですよ。むしろなぜベンチャーが有利になるのかっていうと、サッカーに向いてる奴だけ集めて最初からサッカーチームで作れるからなんですよね。一方で既存企業っていうのは言うなればヤクルトスワローズサッカー部を作んなきゃいけないわけですよね。あるいは、オリックスバファローズサッカー部を作んなきゃいけない。そういった意味で言うと、本件は典型的なブラウンフィールドの上で両利きの経営展開、サッカーも野球もやりましょうっていう話なんです。そこは相当時間的なことも割きながら(展開する必要がある)。長期・中期・短期を分けるという、さっき木村さんの方からコメントがあったように、長期のことだからこそ、今手をつけなきゃいけないことってあるんです。その視点がもっとあれば良かったかなと思いました。チーム名はですね、サッカーに引っ掛けて「本気でワールドカップベスト8を目指すには?」。

 

続きまして2つ目の足立チームです。このチームは、多分アイデアのクリエイティビティが一番あったチームだと思います。その分ちょっとリアリティに関して私はクエスチョンマークを付けちゃったんですけど。まあここはちょっとトレードオフなんで、何とも言いようがなくてですね。(今大会の結果として)2チームがトリプルクラウンを受賞しています。二分されたのは多分、審査員の方あるいは観てる方の中にある種のクリエイティビティ的な発想のジャンプみたいなものを評価する人が(いた結果かと思います。)結構そういう視点が(審査中に)あったので。だから視点を変えればこのチームがチャンピオンだったかもしれません。私が思ったのは、この話を聞いていて、発想を大きくすればするほど、今ここで何をすべきかというところでどうしても遊離が生まれるんですね。だけど、現実の革命であったり、社会変革であったり、まさに社会のトランスフォーメーションというのはそういうある種かなり飛躍も含めた発想のゴールを描きながら、だけど今何をすべきかっていう、一歩一歩ちゃんと踏みしめて進まなきゃいけない(部分があるわけです)。多分この2つが揃わないとやっぱり大きな変化は起きないわけで、この医療を巡る問題、あるいは人の命を巡る問題は全部いろんなところで繋がってくる話なんですけど、この問題はまさに環境と並んでというか、環境とかなり連動する話でもあります。まさに社会のあるいは世界のサステナビリティを考えた時に非常に重大な問題なんです。要はこのチームがですね、願わくは、今度は目の前の課題をどう具体的に対応するか(も考えてみてほしい)。目の前の手前のとこだけでも、さっき言ったように医療の世界っていうのはめちゃめちゃややこしい、いっぱい地雷が埋まってる世界です。その地雷をうまく避けながら一つのモデルを作っていかないと、今度は逆に海外に持って行ってもですね、日本のモデルはダサいってことになっちゃいます。実は、私はJICAの仕事もちょっとやってたんですが、ソフト輸出の例があります。日本の持っている社会システムの中で、世界中からものすごく人気があるのは実は2 つありまして、非常に知られているのは交番です。交番の仕組みというのはものすごく世界中から評判が良くてKOBANっていうのは世界共通英語になっております。それからですね、教育の領域で言っちゃうと、実はね、高専っていうのは世界中から評価が高いんです。残念ながら日本の大学はそういうふうになっていません。KOSENっていうのはこれも英語になっています。何が言いたいかというと、世界にアピールしていこうと思う場合に、この日本の現実社会の中でやっぱりすごくワークしていないと、向こうからするとソフト輸入する気にならないんです。日本はDXが遅れていますから逆に伸びしろがあるので、日本ってそういう意味ではリープフロッグなんですよ。まずは、目の前のこの状況の中で(ワークしている電子カルテを)達成していくようなことができていくと、アフリカでもどこでも到達できるのかなと。そういう意味で言っちゃうと、チーム名はですね「Think Big Act Small」とします。 

 

最後の倉石チームですが、多分ですね、私は中身のリアリティという、実際のビジネスの中に乗っけて議論するって意味では、このチームが一番良くできていたというふうに私は印象を持っています。まあ、要するにいろんなバランスですね。逆にそれがあの“down-to-earth”な分でちょっとインパクトが弱かったのかなと。さっきの優勝のチームと微妙な差が出たのかなと思います。このチームはそういう意味で言うと、深化と探索で、深化の部分(が精緻)ですね。とにかく今目の前の戦いをなんとかして勝たないといけないっていうところで言うと、一番ここがちゃんと現状分析をしっかりしていると思いました。私みたいな立場からすると、決めるのは自分だとした時にあのくらいちゃんと現状分析やっといてもらった方が決めやすいってところがあったんで、ついついディシジョン・メーカーの立場で話を聞いちゃうものですから、そういう意味で私は好感を持ちました。ただ、後半のデータ(ビジネスの領域)に展開していくところは、これは皆さんどのチームも共通の課題があって、甘いっちゃ甘いですね。さっき言った、データ事業をやるための必要なお金の問題も甘いし、あと組織メンバー(も甘い)。野球選手でどうやってサッカーやるんだろうなってところはちょっと甘かったです。(この辺は)これから皆さんが実際にビジネスリーダーと仕事をするときに意識してもらったらいいのかなというところでもあります。ただ目の前、とにかく次の1試合を勝つためには多分一番良い材料を提供してくれていたので、またワールドカップに引っ掛けてすいませんけど、チーム名は、「まずはクロアチア戦でクロアチアに勝とうぜ」っていうことにしました。

 

今回久しぶりのリアル(開催のJBCC大会)で、私もすごく楽しませてもらいました。これは毎回申し上げているんですけど、ファイナリストのベスト5は、ワールドカップ的にはベスト8よりも少ないので、ある意味で賞をもらったチームも、もらっていないチームもそこは誇りにしてもらったら良いと思います。要はそんなに差はないので。見方が変われば順位は変わっちゃいますからそう思ってください。これは本当に誇りに思ってもらえたらと思います。あれだけのチーム数の中でここまできたので、本当にここまで大変だったと思いますし、大事なことはここで何を学ぶかだと思います。えてして、ショパン(国際ピアノ)コンクールなんかも意外と優勝者が伸び悩むことがあります。ここで満足しないで、これをむしろこの先の研鑽を期待しています。経営者としてはMBAを取った後がスタートポイントになりますから。このスタート地点からどれだけ高くて深い経営者になれるかということで、本当の本番が始まるので、ここからぜひ研鑽を積み重ねていってください。それからあとはですね、何人かの方も仰っていましたが、実はこのJBCCで一番勉強になるのは実行委員なんですね。実行委員やるってことが一番ビジネス、あるいは経営の勉強になります。ひょっとすると今日のこの中の方もですね。来年以降、実行委員をやってもらえる方が出てきたら素晴らしいと思います。今回もとりわけこういう極めて複雑怪奇な事業領域の例を見て、素晴らしいケースを作ってくれた皆さん、それから久しぶりのリアル大会をですね、運営を担われた皆さんに最後に私は拍手を送りたいと思います。どうもお疲れ様でした。ありがとうございました。

私の講評は以上です。


ケースについて

JBCC2022 ケース課題

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JBCC2022課題ケース本文.pdf
PDFファイル 347.6 KB
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JBCC2022課題ケース課題添付資料.pdf
PDFファイル 831.2 KB

ケースの概要 / ケースライターの意図

 グランドファイナルにてJBCC2022実行委員会のケース班より説明させていただきました。

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JBCC2022_ケース概要.pdf
PDFファイル 854.1 KB
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JBCC2022_ケースライターの意図.pdf
PDFファイル 1.5 MB

GF進出チーム資料

Aブロック

グロービス経営大学院 東京校 倉石 洸チーム

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倉石洸チーム_予選資料.pdf
PDFファイル 3.7 MB
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倉石洸チーム_本選資料.pdf
PDFファイル 5.0 MB

Bブロック

グロービス経営大学院 オンライン 足立 厚チーム

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足立厚チーム_予選資料.pdf
PDFファイル 2.7 MB
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足立厚チーム_本選資料.pdf
PDFファイル 4.1 MB

Cブロック

神戸大学大学院 村上 大祐チーム

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村上大祐チーム_予選資料.pdf
PDFファイル 1.7 MB
ダウンロード
村上大祐チーム_本選資料.pdf
PDFファイル 14.4 MB

Dブロック

青山学院大学大学院 巌谷 真穂チーム

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巌谷真穂チーム_予選資料.pdf
PDFファイル 2.7 MB
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巌谷真穂チーム_本選資料.pdf
PDFファイル 4.1 MB

Eブロック

グロービス経営大学院 名古屋校 足立 るみのチーム

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足立るみのチーム_予選資料.pdf
PDFファイル 3.3 MB
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足立るみのチーム_本選資料.pdf
PDFファイル 7.8 MB

大会プロモーション

本選大会 キービジュアル

本選大会 リーフレット / ポスター


アンケート結果

■観戦者アンケート・5段階評価

(とても満足 /満足 / どちらともいえない /不満 / とても不満)

 

 観戦者の皆様に アンケートへのご協力をいただきました。JBCC2022の大会は、97.5%の方々にご満足をいただけた旨、ご回答をいただきました。アンケートへのご協力をいただき、誠にありがとうございました。

 

 【一部ご意見・コメント抜粋】

 ●JBCCが単なるコンペティションではなく、 MBAを活かして直面している社会課題をどう解決するかと言う点に感銘を受けた。

 ●ケースも興味深く、発表者のレベルが高く見応えがあった。自身が医師であることもあり、胸を打たれた内容の発表が多かった。

 ●ビジネスプラン、分析資料、プレゼンとも大変よく、自分自身が大変勉強させて頂きました。

 ●出場者や審査員、実行委員会など大勢の関係者が1つのケースに向けて注入する集合知は数多くの示唆があり、深い学びを得られるものでした。

 ●とてもレベルの高いものを見せていただいた。触発された。通常のクラスでの学びでは得られない総合格闘技の真髄を感じることが出来た。